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御寺泉涌寺塔頭 即成院 公式サイト
京都市東山区寺山内町28

この度、音楽家の登竜門として名高い毎日新聞社主催の第68回全日本学生音楽コンクール(高校の部)で各部門の第1位受賞者に、即成院と仏縁深い全国の経済人から有志を募り、「音楽奉納・京都研修」を贈ります。 若き音楽家が、良き日本人として主体性を確立して世界に羽ばたけるよう、音楽だけでなく、日本に息づく文化・伝統・歴史に触れ、身をもって体験することで、生きた経験として世界に発信していただけることと思います。
 今後の若き才能の発展と、皆様のますますのご活躍を祈念申し上げます。

平成27年4月22日
御寺 泉涌寺 塔頭 即成院 住職 平野雅章

「音楽奉納・京都研修」の提案理由

我家は、5分と離れていないところに武蔵野音楽大学があります。この大学では、世界各国から演奏者を客員教授として招いています。
今から37年前のことですが、当時、旧ユーゴスラビア人のオペラ歌手も客員として大学の近くに住んでいました。私の子ども達が彼女と仲良くなり、帰国するまでの10年間、家族で交流を深めました。帰国に際し、息子が通う地元の中学校へ、「700名の生徒のうち一人でも聴いて楽しかったと言ってくれたら、意味がある」と言って、コンサートを贈ってくれました。翌年、26歳でリスト音楽院教授となったハンガリー人のヴァイオリニスト一家が帰国する前に、やはり同じ中学校でコンサートを致しました。
実は、この時代の中学校は荒れていたのです。演奏後、アンコールで校歌を丁寧に弾く姿に、生徒たちは驚き、これまで音楽の授業で、声を出して歌ったことのなかった男子生徒が歌うようになり、学内で合唱コンクールができるようになり、卒業式では、生徒の発案で音楽による卒業式が行われました。後の話ですが、このコンサートを報じた新聞を読んだ、当時のハンガリー大使が、ご夫妻を招いた夕食会で「日本によい贈り物をしてくれました。誇りに思います」と、直々に御礼を言われたそうです。こうした間にも、友達が友達を呼んで、ドイツ、ポーランド、イタリア、イギリス、内モンゴル等の方たちが遊びに来てくれました。特に、実業家のアメリカ人一家との交流は、親子共に年齢が近く、子供たちは毎日遊んでいました。その間、親は、趣味の話から始まって、子育て、政治、経済、文化と話題はつきませんでした。様々な話に共感したり、違いを知ったりと、本音で話し、お正月からクリスマスまで、お互いの国の季節の伝統行事を一緒に遊び、楽しみました。細やかな草の根国際交流する中で、いくつか気になる共通点に気づきました。

①ギブ&テイク(自国の歴史や文化を語る)
留学先で、音楽を教えて頂くのですから、お返しに、自国の歴史や文化を語り、身近な日本の四季の行事などを話、伝えることは大切です。

②宗教について
日頃、日本人同士の付き合いに出てこない話題だと思いますが、外国の方から「あなたは何の宗教を信じていますか?」という質問を受けます。私たち大方の日本人は、堂々と?「無宗教です」と言いませんか?実は、私はそう言いました。しかし、その質問の真意は、「お互いの信仰が違うことは問題にはならないけれど、その人の考え方の核となる物差しを知っている方が理解が深まるし、自分の意見を持っている人の方が、より魅力的だと思う」ということだと教わりました。宗教の質問が、このように導かれる、身近な質問とは思いませんでした。

③社会貢献、還元することは当たり前
社会的に立派になったらそうします、と言う人もいますが、どうでしょうか。今の自分にできることを発表し、伝えることも、とても大切で、若いうちからできることがあります。母校や地元の幼稚園、老人ホーム、病院などに出向いての演奏会など、小さなことから積み重ねてほしいと思います。控えめであることとは、また別の次元と考えています。

④新聞を読むこと、異分野の人と交流すること
これはテレビで見た受け売りの話ですが…ある日本を代表する世界的メーカーの社長が、チャイコフスキーコンクールで優勝した若手ヴァイオリニストを連れて、ジュリアード音楽院の名ヴァイオリニスト、アイザック・スターンさんを訪ねました。そこでは、ヴァイオリンの話は一切なく、「あなたは新聞を読んでいますか?」と一言尋ねられたそうです。
アイザック・スターンさんのこの一言は、誠実に生きようとする全ての人に通じることではないかと、私は大変感動いたしました。聴く者の心を揺さぶるような演奏者は、新聞を通じて世界に目を向け、異分野の人たちとの交流を持ち、陰ながら己を養う努力をされていることを知りました。この番組を見て、私は、それまでに出会った外国の友人が残してくれた話と重なって、このことを若い方に伝えたいと思ってきました。才能に恵まれ、これから世界に羽ばたく受賞者の方には、是非、生かして頂きたいと思い、この度の「音楽奉納・京都研修」を思いつきました。
千年前からある“仏さまのオーケストラ”への音楽奉納。神社や仏閣、源氏物語の舞台となった京都御所を特別拝見。異分野で活躍される大先輩のお話。一世代上の先輩との交流など。次の飛躍に必ずや役立つことを信じて、ご提案いたします。

企画室 篁・U.S.A.
榎戸 敬子

創設メンバー

御寺 泉涌寺 塔頭 即成院 住職          平野雅章
毎日新聞社常務執行役員 コンテンツ事業本部長  成田 淳
ホテル日航プリンセス京都 代表取締役社長    篠 信治
ピアニスト                   佐藤勝重
発起人:企画室 篁・U.S.A. 代表         榎戸敬子

Ⅰ部

ご 挨 拶:毎日新聞社
音楽法要のための献花:ご来賓代表 関係者代表  演奏:佐藤 勝重
祝  詞:企画室 篁・U.S.A.
清  浄:平野 雅章〈即成院 住職〉
音楽奉納:第68回全日本学生音楽コンクール(高校の部)第1位受賞者
     佐藤 勝重〈ピアニスト〉
ご来賓紹介
感謝状贈呈:毎日新聞社より「仏さまのオーケストラ」護持会へ
祝  詞:篠 信治〈ホテル日航プリンセス京都 代表取締役社長〉

音楽奉納プログラム

黒沼 香恋 〈ピアノ〉 東京藝術大学音楽学部附属音楽高校2年
バッハ:音楽の捧げものBWV1079から三声のリチェルカーレ

大島 理紗子 〈バイオリン〉 名古屋市立菊里高校3年
イザイ:無伴奏バイオリンソナタ op.27-6 E-dur

足立 歌音〈声楽〉 東京藝術大学音楽学部1年
北原白秋 作詩 山田耕筰 作曲:かやの木山
北見志保子 作詩 平井康三郎 作曲:平城山
プッチーニ:オペラ「ラ・ボエーム」から~私が町を歩くとき

清水 伶〈フルート〉 東京音楽大学付属高等学校2年
テレマン:12のファンタジーからNo.2
カルク=エラート:ソナタ・アパッショナータ

森田 啓佑〈チェロ〉 桐朋女子高校音楽科3年
黛敏郎:文楽

佐藤 勝重
フィールド:ノクターンno.4 A-dur
ショパン:ノクターンop.posth.cis-moll
スクリャービン:左手の為のノクターン op.9-2 Des-dur

佐藤 勝重
第39回全日本学生音楽コンクール・ピアノ部門 小学校の部 東京大会第1位
第41回全日本学生音楽コンクール・ピアノ部門 中学校の部 全国大会第1位並びに野村賞を受賞

桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業後渡仏。その後、パリ国立高等音楽院を1等賞、パリ・エコール・ノルマル音楽院の高等演奏家課程を賞賛つき満場一致で卒業。12年間の在仏を経て帰国後、ソロを初め室内楽にも力を入れており、年間40~50公演のコンサートに出演。また音楽雑誌への執筆やセミナーでの講義、コンクールの審査員なども行い、桐朋学園音楽大学、昭和音楽大学にて後進の指導にあたる。
ソロCD『ノクチュルヌ ~ピアノ音楽史を彩った夜想曲の系譜~』が“レコード芸術”2013年2月号「器楽部門特選盤」に選ばれた。2015年第69回全日本学生音楽コンクールピアノ部門審査員。

感謝状贈呈

感謝状
貴殿は全日本学生音楽コンクール高校の部受賞者による音楽奉納コンサートの開催 に対し深いご理解とご協力を賜りその実現にご尽力をいただきました。
よってここに感謝状を贈り謝意を表します。

平成27年4月22日
毎日新聞社

祝詞

 御寺 泉涌寺 塔頭 即成院 住職 平野雅章 様
 本日の、「第4回音楽奉納 in 仏さまのオーケストラ即成院 第68回全日本学生音楽コンクール受賞者演奏会」のご開催を心よりお慶び申し上げます。開催にあたり、平野雅章御住職をはじめ、関係各位のご尽力に心から敬意を表します。本日は国会開会中のためどうしてもお伺いができず申し訳ございません。ご参集の皆様方が、日本の伝統文化を感じられるこの素晴らしい即成院で、美しい音楽の音色とともに素敵なお時間を過ごされますことをお祈り申し上げ、お祝いのメッセージとさせていただきます。

平成27年4月22日
参議院議員 元内閣官房副長官 福山哲郎

祝詞

日頃は皆様方には大変お世話になり、心より感謝申し上げます。
 まずは、先ほど音楽奉納をして頂きました、全日本学生音楽コンクール高校の部において第一位受賞された皆様に対しあらためてお祝いを申し上げます。また、左手のみで演奏するなど、素晴らしい演奏をご披露頂きました佐藤様、本当にありがとうございました。
 まずは、只今の演奏を聴いて私は感動いたしました。日頃はコンサートホール等で行う演奏とは違って、この仏さまのオーケストラの前で演奏されるという経験は皆様にとって非常に特別で感動的なものであったのではないでしょうか。
 私が感動した理由は、皆様が非常に素晴らしい演奏をされたことだけではなく、ミスもなく演奏されたその背景にある皆様のこれまでのご努力、ご苦労は大変なものであると感じた事。そしてお一人お一人の立ち振る舞いが大変素敵で、仏様の前に行く姿、演奏をしている姿、また終わってからの戻る姿を拝見し、どこでこんな人生経験をされたのかと思えるくらいに、堂々としていて心から素晴らしいと感じました。本当に皆様は日本の宝物だと思います。
 この企画は「音楽奉納と京都研修」という形でスタートした訳ですが、4年前の10月に企画室 篁・U.S.A.代表の榎戸敬子様から声を掛けられまして、即成院の平野ご住職様、毎日新聞の皆様、そして私どもが集まり打合せを行いました。その時話に出たのは、全日本のナンバーワンの皆様が今後どのように活躍されるのかを考えた際、日本にとどまらず世界に向けて羽ばたいていく希望に満ちた皆様だということでした。そして海外に行きますと必ず待ち受けているのが、「日本はどういう国なの?どうゆう歴史があるの?どうゆう文化があるの?」と問いかけられる事です。そこで、神社仏閣が7200箇所もある京都の地において、日本の伝統・歴史・文化の一端を皆様から語って頂くことが出来れば、この「音楽奉納と京都研修」が活かされた意義の有る研修になるのではないかと考えた訳です。そして、今年4回目の「音楽奉納と京都研修」を迎え、これはずっと継続しなければならないと思った次第でございます。
皆様はまだ学生でこれからの輝かしい将来に向け、無限の可能性を信じ、志高く人生を歩んで頂きたいと思っております。その中で、必ず苦労や困難が待ち受けていると思いますが、その苦労や困難は必ず人を成長させる糧になります。人間は、苦労や努力を通じて人間としての味わいを深くしていくわけであります。是非、皆様には苦労や困難に正面から立ち向かい、世界のナンバーワンを目指して精進して頂きたいと心から願っております。
 最後になりますが、本日お集まり頂きました皆様方のご健康・ご多幸をご祈念申し上げ、私のお祝いの挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

平成27年4月22日
代表取締役社長 篠 信治

京都研修

4月22日〈水〉
  16:20 祇園甲部歌舞練場 都をどり観賞

 4月23日〈木〉
  11:00 京都御所 特別参観

  12:15 昼食 ゆどうふの順正 生湯葉・湯豆腐懐石

  13:45 平安佛所工房 作品展見学
       佛師 江里康慧・戴金 人間国宝 故 江里佐代子

  15:25 清水寺 特別参拝
      講堂内 仏足跡特別参拝並びに散華
      成就院庭園 特別参拝
      本堂並びに清水の舞台へご案内
      清水寺門前町散策

  17:45 ホテル日航プリンセス京都にて解散式

  18:30 京都駅八条口解散

掲載された記事

京都研修〈都をどり/京都御所〜順正〜平安佛所工房〜清水寺〉



<音楽奉納・京都研修を終えて>

黒沼香恋(ピアノ)
この度は音楽奉納という貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。今回バッハの『音楽の捧げもの』を演奏するにあたって、バッハ晩年の曲に共通する高い精神性を理解する事が難しく感じていました。リハーサルの時に二十五菩薩像を前にピアニストの佐藤勝重先生より「今回はお客様というよりは二十五菩薩像に向けて演奏して下さい」とアドバイスを頂きバッハがこの曲のタイトルに、「捧げもの」とつけたのは主題を与えてくれたフリードリヒ2世に対するだけでなく神への奉仕だったという感覚がわかってきました。
 翌日の平安佛所工房では仏像を新たに作る時は古い伝統を大事にしながら、新たなオリジナルを加えていくこと、金彩は一つ一つ金箔を切ってはる気の遠くなる様な作業を経て作品ができることを知り音楽は目に見えないものですが、そこに芸術というものの共通点を感じました。そして清水寺を訪れ普段入る事のできない内裏で本当に貴重なお話しを頂きました。自分にとって大切なもの、和むものが自分の仏になること、自分が苦しくなった時、心が狭くなった時こそ視野を広げ人の大切にしているものを認め大事にする事、これが仏の教えだという事です。私は幼稚園から高校に入るまでカトリックの学校に行っていたので、キリスト教の精神は少しはわかっていましたが、いざ日本の仏教はわかっていなかったのでこの様な素晴らしい仏教や文化が日本にはある事を誇りに思いました。今回の体験を活かし、あらゆる角度から音楽に向き合い精進していきたいです。本当にありがとうございました。

大島理紗子(バイオリン)
この度私は、4月22日~23日の2日間、京都即成院での音楽奉納・京都研修に参加させて頂きました。小学校の修学旅行で訪れて以来の久し振りの京都でしたが、今回はより深く日本の伝統、文化、歴史に触れることができました。
 22日の即成院での音楽奉納は、二十五体の仏様に圧倒されながらも、その前でバイオリンを演奏させて頂きました。仏像の中はバイオリンと同じく空洞になっており、そのためとてもよく音が響くそうです。仏様と一緒に音楽を奏でるという貴重な体験をすることができました。
 京都研修では、都をどり、京都御所、平安佛所工房、清水寺を見学しました。とくに平安佛所工房での截金作品はとても美しく、金線が音の一つ一つで、デザインがリズム、作品が一つの曲というように音楽に通ずるものを感じました。このように時代を超えて受け継がれていく日本の文化、伝統、歴史を守る方々から直接お話をおききすることは日頃何気なく生活している私にとって、改めて日本の良さを考えさせられる貴重な経験になりました。
 このような機会を与えてくださった皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
 ありがとうございました。

足立歌音(声楽)
 この度は、第4回音楽奉納、京都研修へ参加の機会を与えてくださり、ありがとうございました。
 お寺独特の厳かな空気の中での演奏は素晴らしい経験となりました。即成院の25の仏像は、中が空洞になっているそうで、歌声も想像以上に響き、大変歌いやすかったです。
 音楽奉納にて私が歌いました「かやの木山の」と「平城山」はそれぞれ曲頭に゛Alla giappone″(日本風に)、゛古雅にさびしく″という指示があります。日本風とは、古雅とは、何なのでしょうか。
 私は写真や資料を参考にしながら歌詞の世界を想像して歌いました。しかし、日本人でありながら具体的にイメージをするのは難しいものがあります。今回の研修では、いにしえの雰囲気を残した京都の空気を全身で浴び、「静」という音を聞き、美しい風景や伝統芸能を見て日本について学びました。初めて体験することも多く、まるで自分が外国人のようだと思った一方、庭園の和やかな雰囲気に落ち着きも覚え、やはり自分は日本人なのだと実感しました。
 企画提案者の榎戸さんから「海外に行った場合、日本を自分なりに説明できるように」とのお話がありましたが、声楽は特に国内で演奏するにしても、日本歌曲やオペラ「蝶々夫人」など様々な曲で日本への理解が必要です。その際にこうした体験は、どんなに資料を読んでも得られない、貴重な音楽表現の財産になると思います。これからも、様々なものに興味を持ち、貪欲に音楽の道を邁進していきたいと思います。
 最後になりましたが、今回の音楽奉納・京都研修を支えてくださりました全ての皆様に、感謝申し上げます。

清水伶(フルート)
 20世紀中頃まで日本人の心の拠り所であった、日本の「お寺」。今回、即成院での音楽奉納を通して、日本人の感性というものを改めて自覚できたような気がする。
 お寺で演奏することは僕にとって初めての体験であったが、西欧音楽をお寺で演奏したことで、西欧と日本の違いというものを肌で感じることができた。
 西洋の文化の中心である教会はたいてい石造りであるが、お寺は木造建築である。また、空にそびえたつように建てられた教会に比べると、お寺は本堂の天井の高さがとても低い。そのため音の響きがとても異なっていた。
 教会で音を出すと、音が無数に反射するので音が増幅され、非常に長い残響が発生する。そして高い天井まで音は響き、まるで天の声が聞こえてくるかのように音が降り注ぐ。それに対し即成院での演奏は、音の余分な響きを吸収し、音の素が出ているように思えた。出した音が自ら主張し、空間を支配するのではなく、静かなお寺という空間の中で、音が生み出される。自分と会場がともに響くというような感覚はほとんどなく、自分が出したままの音を、お寺が静かに受け止めているように思えた。ここに見られる空間と演奏者の関係こそ、日本人が頻繁に用いる、「間」というものなのではなかろうか。
 また、休符で音が無い状態の時、そこにはまさに明鏡止水の静けさが広がった。それはこれまで僕が体験したことのないものであった。そのような神聖な静寂に接したことで、休符、つまり音楽の「間」を表現として組み入れることの重要性を改めて強く感じた。
 お寺というものは本来器楽を演奏する場ではないかもしれない。しかし鐘の音が、音の芯を残したまま減衰し、空気にふっと消えていく様子を耳にすると、この単純な一音にさまざまなものが感じられ、一音で音楽が成り立っているようにさえ思える。
 現在、西洋音楽でさえもグローバル化が進み、音楽に国民性が反映されることが少なくなったのはもちろん、似たり寄ったりの演奏ばかりの世の中になってしまっている。
 今回改めて奥深さを感じることのできた「間」を自らの音楽に取り入れるなど、日本人ならではの感性で、少し違った角度から西欧音楽を見つめる。そうすることで、日本人としてのアイデンティティーを失わずに世界で勝負できるのではなかろうか。

森田啓佑(チェロ)
音楽奉納と京都研修を思い返すと、最初によみがえってくるものがある。自分でも分からないのだが、もみじの葉の緑色だ。今回の研修では都をどりを観賞させて頂いたり、清水寺の普通では入ることのできない場所に入れて頂いたり、とても印象深い経験が多かったのだが、なぜそれよりももみじの緑が目に焼きついているのか考えてみた。
 僕達の研修が行われたのは四月下旬、木々が芽吹いて少し成長した後のとても綺麗な新緑の季節だ。人間の一生にたとえるなら、今まで蓄えてきた栄養をもとに、これからも栄養を吸収して更に成長していく高校生、ちょうど僕達と同じ時期ではないか。僕達は、色々な人達に出会い、様々な経験を通じて自分を成長させていく時期に入ってきている。秋になれば寒さによって紅葉する葉と同じように、僕達も外からの刺激で大きく成長していくことだろう。もみじの緑に、僕は自分の姿を重ねたのかもしれない。
 四月の葉の緑色は一色ではないにせよ似通っている。しかし、その葉は紅葉すると黄・赤・橙・茶など一枚一枚違う色に染まっていく。そして同じ一枚の赤く紅葉した葉でも葉先や茎のところなど場所によっては濃い赤だったり、橙色に近かったり、様々な表情がある。僕は今回京都で感じた伝統ある日本の文化や応援して下さる人々の思いを大切にしながら、紅葉した一葉がたくさんの色を持っているように、僕も多様な色を持った大人になりたいと思う。
 最後になりましたが、京都での経験を通じて精神的に考えるきっかけを与えて下さった関係者の皆様に深い感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。本当にありがとうございました。